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大阪高等裁判所 昭和53年(行コ)11号 判決

大阪市東区横堀二丁目六番地

控訴人

寺杣産業株式会社

右代表者代表取締役

寺杣四吉

右訴訟代理人弁護士

太田全彦

大阪市東区谷町二丁目三一番地

被控訴人

大阪法務局登記官 飯野実

右指定代理人

坂本由喜子

中嶋寅雄

石尾典迪

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(控訴の趣旨)

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が控訴人に対し昭和五〇年一月六日付でした原判決添付別紙登記申請目録記載の所有権移転登記申請を却下する旨の処分を取消す。

3  被控訴人が控訴人に対し同日付でした前項の所有権移転登記申請にかかる登録免許税の課税標準額を金四四三〇万五〇〇〇円、登録免許税を金二二一万五二〇〇円とする認定処分のうち、課税標準額につき金一〇〇〇万円、登録免許税につき五〇万円を超える部分を取消す。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(控訴の主旨に対する答弁)

主文同旨

(当事者の主張)

次に訂正、付加するほかは原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決二枚目表一一行目、四枚目裏一一行目、五枚目裏八、九行目にある各「登記免許税」を「登録免許税」と、同三枚目表四行目「及ふ」を「及び」と、同六枚目表六行目の「台帳価格どおりとしており」を「台帳価格どおり」と、同九枚目裏六行目の「租税力」を「担税力」と、それぞれ改める。

二  控訴人の主張

登録免許税法第一〇条第一項後段の規定が憲法第一四条違反とならないためには、台帳価格が時価より低く登録されているという前提事実が存在しなければならない。けだし、そのような前提事実のもとでは、更地価格と底地価格との間に登録免許税額自体それほど大きな差異は生じないからである。ところが台帳価格が順次の評価替により時価とほぼ等しくなっている昨今においては、もはや徴税の便宜ということで法の下の平等原則を無視することはできないはどの不均衡が露呈しているから、前記法条はもはや合理的根拠のある規定ということはできない。

(証拠関係)

1  控訴人

(一)  甲第一号証、第二号証の一、二、第三号証、第四号証の一ないし五、第五号証、第六号証の一、二(写)、第七ないし第一〇号証提出。

(二)  原審における控訴人代表者尋問の結果援用。

(三)  乙第一号証の成立を認める。

2  被控訴人

(一)  乙第一号証提出。

(二)  甲第四号証の一ないし五及び第九号証のうち、官署作成部分の成立は認めるが、その余の部分の成立は知らない。同第六号証の一、二の原本の存在は認めるが、その成立は知らない。同第八号証のうち大阪府税の領収書の成立は認めるが、その余の部分の成立は知らない。その余の甲号各証の成立を認める。

理由

一  当裁判所は控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次に訂正、付加するほかは原判決の理由記載と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一一枚目表六行目の末尾に、「そして成立に争いのない甲第二号証の一によれば、大阪法務局長の裁決の日は昭和五〇年七月二日であることが認められる。」を追加する。

2  同一一枚目表七行目の「登記免許税」を「登録免許税」と、同裏五行目及び一〇行目の各「租税力」を「担税力」と、それぞれ改める。

3  同一二枚目表五行目の「の負担」から同七行目の「又いわゆる」までの部分を、「の負担、台帳価格と時価との比率の一般的な推移を考慮しなければならない合理的な理由はない。控訴人は登録免許税法第一〇条第一項後段の規定は価額が大巾に異るものを登録免許税の課税標準額について同一に取扱おうとするもので、憲法第一四条の法の下の平等の原則に違反する旨主張するが、このような主張は結局憲法上法律に妥ねられた租税に関する事項の定立について、特定の法律における具体的な課税標準の定めに関する立法政策上の適否を争うものにすぎず、違憲の問題を生ずるものではない(最高裁判所昭和二八年(オ)第六一六号同三〇年三月二三日大法廷判決、民集九巻三号三三六頁参照)。また、登録免許税は前記のとおり流通税に属し、いわゆる」と改める。

4  同一四枚目表三行目の「一一八条二項」を「一一八条一項」と改める。

5  同一四枚目表末行の「弁論の全趣旨」の前に「成立に争いのない甲第一号証及び」を挿入し、同裏一行目「一〇月六日」を「一月六日本件却下処分前」と改める。

二  そうすると、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川添萬夫 裁判官 吉田秀文 裁判官 中川敏男)

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